水月夜
でも、気づけば口が動いていた。


「そうだよね。今聞こえたのは空耳だよね」


空耳では納得しないかと思ったが、聖奈はびっくりするほど私の言葉を簡単に受け入れていた。


ほっと胸を撫でおろし、注文したジュースを飲んで喉をうるおした。


と、そのとき、こちらに近づいてくるふたつの足音が聞こえてきた。


それと同時に声もどんどん大きくなっていく。


「あっ、雨宮くんと天馬じゃない?」


聖奈の言葉で、足音がするほうに目を向けた。


聖奈の言ったとおり、階段を上ってやってきたのは雨宮くんと天馬くんだった。
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