水月夜
危なかった。


首を左右に振り、トーストと一緒に置いてあったジュースで喉をうるおした。


大好きなものをゆっくり味わうひまもなく、リビングに入ってから10分で食べ終えた。


洗面所の鏡で再び身だしなみをチェックし、お母さんに顔を向けずに「いってきます」と告げ、家を出た。


玄関のドアを閉めた瞬間、ブワッと強い風に襲われる。


強く吹きつけた風はほんの数秒だけ吹いていたので、とくに害はなかった。


今は5月の半ばなので風を冷たく感じることはなかったが、ちょっと湿っぽかった。


すぐにやんだ風がまったくなかったかのように、早歩きで学校に向かう。


早歩きをしてからわずか5分で学校に到着した。


こんなに早く着くとは思わなくて内心驚くが、表情には出さない。


細かいことでいちいち表情に出さないで、と直美に言われそうだから。


ローファーから学校指定シューズにはきかえて教室に入る。


べつに注目されたかったわけじゃないのに、教室のドアを開けたタイミングでクラスメイトの注目を浴びた。
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