水月夜
私がそこまで言ったところで、雨宮くんがさらに目を見開いた。


「まさか、猪狩は……」


「うん。たぶん『水月夜』が不気味に見えただけじゃなくて、『水月夜』を飾ってはいけない方角に飾ったから、奇妙な出来事が起こったと思う」


「マジかよ。じゃあ、猪狩が言ってたことは夢で見たことじゃなかったんだな……」


ポツリとひとりごとのようにつぶやく雨宮くん。


と、突然、雨宮くんがこちらに視線を向けた。


「なぁ、柏木」


「な、なに?」


「……お前が『水月夜』を飾ったのって、どの方角だった?」


雨宮くんに問いかけられたタイミングで、『水月夜』に目を向ける。
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