水月夜
悔しそうに歯をギリギリと鳴らす緒方先輩。


それほど私のことが好きだったのだろう。


そう思っていると、先輩の表情を見つめていた雨宮くんが、私を抱きしめる力を強くしながらこう言い放った。


「……もう二度と梨沙に近づくな。もし近づいたら許さない」


「……っ、くそっ……」


雨宮くんのはっきりとした口調に圧倒されたのか、緒方先輩は軽く舌打ちをしたあと保健室を出ていった。


そのタイミングで、雨宮くんが私から離れた。


「……助けてくれてありがとう、雨宮くん」


「いや、俺は彼氏として当然のことをしただけだよ」
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