水月夜
感謝の気持ちを込めてお礼を言う私に、雨宮くんが照れながらボソボソつぶやく。


顔を赤くする雨宮くん、可愛い。


小さく笑っていると、雨宮くんが突然正面から私を抱きしめてきた。


「ごめん、昨日は俺が悪かった。たしかにお前の言うとおりだった。久保ってやつを責めるなって。俺が間違ってたんだ……」


「ううん、そんなことない。雨宮くんは悪いことなんてひとつもしてないんだから」


優しく諭すようにそう言う私に、雨宮くんは涙をこぼした。


「ありがとう、梨沙……」


涙に濡れた制服をそのままにして、私は雨宮くんの頭を優しく撫でた。
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