水月夜
耳をかすかに撫でる雨宮くんの声に、心臓が大きく跳ねた。


それと同時に、自分の頬が熱くなっていく。


「だ、ダメって……?」


「言ったら理性が崩壊して、お前をここで襲うかもしれないってこと」


お、襲う……⁉︎


なに言ってるの、雨宮くん。


あなたの言う『襲う』って、どういう意味?


心の中に疑問が芽生えたが、その直後に雨宮くんが再び足を動かしたので、聞けなかった。


無理やり階段を上らされる私を軽くスルーして、雨宮くんが質問をぶつけてきた。


「てかお前、俺に“梨沙”って呼ばれるの、嫌じゃねぇの?」
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