水月夜
「えっ、嫌じゃねぇのって……?」


思わず聞き返す私。


「俺、昨日からお前のこと“梨沙”って呼んでるけど、お前は嫌だと思わねぇのか?」


「……嫌だとは思わないよ。だって、雨宮くんにそう呼ばれて嬉しいと思ってるから」


思ったことをそのまま口にする私に、雨宮くんが深いため息をついた。


どうしてため息をつく必要があるんだろう。


「男の前で素直に嬉しいって言うなよ……」


そう言ったときの雨宮くんの顔が赤かった気がするが、私は気づかないフリをする。


しかし、気づかないフリをしてすぐに雨宮くんに抱きしめられ、目を見開いた。
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