水月夜
やっぱり。


『水月夜』を最初に買ったのは、久保さんだったんだ。


「買ったのはレプリカだったけど、俺は満足だった。だって、レプリカとはいえ、マリコの描いた絵であることに変わりはなかったから」


「…………」


「だけど……その絵がなんか不気味に見えて。買ったその日から俺のまわりで変なことが起こったんだ」


「誰もいない部屋のものが散らばったり、部屋の電気が突然消えたり、毎日絵が変わったり、暗い場所に白い手が浮かんでたり……ですか?」


私の言葉に久保さんが少しだけ目を見開く。


「あぁ。でも、それだけじゃない。夜寝ると毎日夢の中に血まみれのマリコが出てきたんだ」
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