水月夜
「ど、どういうことですか……?」


顔を引きつらせながら質問を投げかけた私に、久保さんは不敵な笑みを浮かべた。


「あーあ、優しくするフリをするのも疲れたな。自分がつらくなるだけだ」


「…………」


「他の人間よりも自分の命のほうが大切に決まってるじゃないか。俺がそう思ってるってことに気づかないなんて、梨沙ちゃんは鈍感だなぁ」


“鈍感”。


昨日の昼休み、保健室で本性を見せた緒方先輩にもそう言われた。


自分はそんなに鈍感なのか。


なんて考えている場合じゃない。


呆然とする私に、久保さんはさらに口角を持ち上げた。
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