水月夜
久保さんの言うとおり、もし家族や雨宮くんが死んでしまうかもしれないという事態になったら、私は真っ先に『私が死ぬ』と言うだろう。


言葉を詰まらせてうつむく私の反応を、久保さんは図星だととらえたようだ。


「どうやらその顔は図星って顔だね。じゃあ、バカみたいに気を遣う梨沙ちゃんに命令するよ。俺のために死んでくれる?」


えっ……。


私が、久保さんのために死ぬ……?


目を見開き、久保さんから距離をとる私に、雨宮くんと聖奈と天馬くんが叫んだ。


「梨沙があんたのために死ぬわけねぇだろ!」


「そうよ! たしかに梨沙は他人に気を遣う子だけど、あなたのような人のために死ぬなんてありえないわ!」
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