水月夜
誰も直美に反論や抵抗を見せないのに、彼女だけがクラスの中で直美に立ち向かう唯一の生徒だ。


しかし、鋭い目つきで睨む豊洲さんでも、直美の弱点は知らない。


対抗すればいじめのターゲットになるかもしれないということはわかっているはずなのに、豊洲さんはなぜ弱点を知らないまま直美に立ち向かっていこうとするんだろう。


豊洲さんがいじめのターゲットになるかもしれないと思ったのは千尋も同じだったようで、豊洲さんの肩に手を置いて引き離そうとした。


「弥生、そんなふうに言ったら大坪さんが怒っちゃうよ。お願いだからこれ以上言わないで」


コソッと耳打ちをして言葉で止めようと考えたらしい千尋。


でも、豊洲さんの表情は変わらなかった。


「どうして大坪さんが怒るの? 悪いのはまぎれもなく大坪さんじゃん。それに大坪さんを止めようとしない志賀さんと遊佐さんも悪いよ」


声のボリュームをまったく落とさない豊洲さんに、千尋が焦り顔を見せる。


と、ここであることに気づいた。
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