水月夜
心の中でそうつぶやいたあと、パジャマから制服に着替え、身だしなみを整える。


予習をする前に机の上に立てておいた鏡に向かって微笑み、口角を最大限に上げた。


慌てないように必要な教科書、参考書、筆記用具をカバンの中に入れ、スマホをブレザーのポケットに入れ、自室をあとにし、階段を下りる。


ひょこっとキッチンとリビングに顔を覗かせるが、お母さんの姿が見えない。


少しばかりの疑問を抱いたとき、リビングのローテーブルに小さなメモらしき紙きれが置いてあるのを見つけた。


リビングに入って、ローテーブルの上にある紙きれを手に取り、じーっと見つめる。


【梨沙、ごめんね。


お母さん、今日朝早くから仕事が入ったの。


帰ってこれるのは夜中になりそうだから、夕飯は冷蔵庫にあるもので済ませておいて。


よろしくお願いします】


このメモの筆跡はあきらかにお母さんだ。


家には私とお母さんだけでなくお父さんも住んでいるが、お父さんは海外出張が多いため、なかなか家に帰ってこられないのだ。


それはともかく、夜までひとりか。


夕飯は5日前にコンビニで買ったパスタでいいか。
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