水月夜
小さく息を吐き、メモの横にあった惣菜パンを手に取り、ひとりで食べる。


なんかさみしい。


学校では直美とヒロエと紀子の3人と昼ご飯を食べるからさみしいという感覚はなかったけど、ムダに広いこの家でひとりパンを食べるのはちょっとむなしい感じがする。


なんて、いつまでもさみしさにひたってる場合じゃない。


早く家を出ないと遅刻する。


惣菜パンを食べ終えたあと、キッチンのシンクで食器棚から出したコップに水を入れ、口の中に無理やり押し込んだパンを喉の奥へと入れた。


簡単に歯磨きをして再び身なりを確認して、鍵を持って家を出た。


鍵穴に鍵を差し込もうとしたが、なかなか鍵穴に入らなくて、手汗のせいで金属のさびたにおいが手に染みついた。


それだけで気持ち悪いとは思わない。


焦っていたら手に金属のにおいがつくのは仕方のないことだと思う。


穴に差し込もうとした数十秒後、なんとか鍵穴に鍵を差すことができ、ほっと胸を撫でおろす。


ひとつの役目を終えた鍵をブラウスの胸ポケットに入れながら、学校までの道をスタスタと歩いた。
< 52 / 425 >

この作品をシェア

pagetop