水月夜
大袈裟だな。


登校するときに通る道が同じなら、学校で会う前に登校途中で会うのはめずらしいことじゃないのに、私の姿を見つけて会っただけで“奇跡”と言うなんて。


私はお姫様でも女神様でもないから。


苦笑いを浮かべつつも、緒方先輩が私のもとにやってきたなら仕方ないと思い、学校まで一緒に歩くことにした。


学校に着くまでは緒方先輩とプライベートなことを話した。


「俺の家、犬を2匹飼ってるんだよね。犬1匹でさえも世話が大変だから飼わなくてもいいって言ったんだけど、妹がどうしても2匹飼いたいっていうから飼ったんだよな」


「そうなんですか。うちはお母さんが動物アレルギーなのでペットを飼えないんですよね。緒方先輩が羨ましいです」


じつはお母さんは動物アレルギーを持っており、動物に触ると腕や顔にじんましんができる。


お父さんが朝早くから夜遅くまで家を空けていることもあり、私の家ではペットを飼っていない。


「そうか。でも俺も柏木ちゃんの家が羨ましいよ。世話の大変なペットを飼ってないから」
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