水月夜
「そうなんだ……」


手のひらに襲う痛みに耐えながらつぶやくことしかできない。


『明日覚えてろよ』


昨日の昼休みの終わりに直美は豊洲さんにそう言っていた。


自分に刃向かったことがよほど気に食わなかったのか、直美は本当に豊洲さんに攻撃したらしい。


堂々と『どいて』と言わせないように執拗な攻撃をするのは、直美の昔からのいじめ方だった。


いつだって直美のいじめ方は度が過ぎていた。


小学生のとき、直美はクラスの女子から『お調子者』と呼ばれていた。


私が知り合ったころから直美は周りの人たちにひいきにされていて、学校の先生全員を味方につけていた直美。


そんな直美が気に入らなかった女子たちからうしろ指をさされるようになった。


心が折れやすく気弱な人間なら傷つき、ひとりで閉じこもるだろう。


だが、直美は傷つくほど気弱ではなかった。


直美は傷つくどころかむしろ自分の悪口を言った女子たちに仕返しすることをたくらんでいた。


機会を狙ってはその女子たちを引っ捕まえ、いじめていた。
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