水月夜
「気を遣ってる?」


「うん。柏木さんは気づいてないだろうけど、クラスのみんなは柏木さんに感謝してるんだよ。大坪さんと志賀さんと遊佐さんと違って誰のこともいじめたりちょっかいを出さないからだと思う。大坪さんたちは誰に対してもいじったりするけど」


クラスメイトみんなが私に感謝してる?


あはは……そんなまさか。


苦笑いをしそうになったとき、隣にいた雨宮くんがひょこっと顔を覗かせた。


「そうだよ。柏木は大坪と仲がいいから大坪と一緒にいじめすんのかなって思ってたけど、前に『やめようよ、人をいじめるなんて!』って言ってた柏木を見て、優しいやつだなって思ったよ。見た目はちょっと派手だけどさ」


その言葉でピクッと一瞬だけ体を震わせた。


まさか、雨宮くんに前言った言葉を聞かれていたなんて。


去年、当時クラスメイトだった生徒たちに向けて言った言葉。


『自分以外の誰かをいじめて楽しいの? そんなの、もうやめようよ。いじめてたってなにもいいことはないし、いつか絶対自分に返ってくるし!』


1年生のとき同じクラスではなかった雨宮くんに聞かれていたとは思わなかった。
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