水月夜
豊洲さん以外のクラスメイトに派手すぎるから近づけないって言われることが傷つかないと言ってるわけではない。


私は誰かひとりに『明るい』って言われただけで、もう……。


心の中で言いたいことを言おうとしたそのとき、朝のホームルームがはじまるチャイムが鳴った。


やばい、教室に戻らないと。


急いで立ちあがって保健室を出ようとする私を、雨宮くんが追いかける。


「あっ、待てよ柏木!」


背中に刺さる雨宮くんの声をスルーして、勢いよく走りだした。


ごめんね、雨宮くん。


ホームルームがはじまる前に戻らないと、直美になにしてたんだと疑われるんだ。


豊洲さんと雨宮くんを保健室に残しておいたのはちょっと後悔してるけど、直美に言葉責めされなければ私のポジションは安泰なんだ。


自分勝手な行動かもしれないけど、許して。


どうかお願い。


ギュッと目をつぶりながら走り続ける。


まるで、保健室で浴びせられた雨宮くんと豊洲さんの言葉を全力で振りきるように……。
< 67 / 425 >

この作品をシェア

pagetop