水月夜
教室に残ったのは私だけになった。


ひとりになったくらいでべつになにも起こらないけど。


ははっと苦笑いを浮かべて歩きはじめる。


だが、数歩進んだところであるものが机の上に置かれてあることに気づいた。


あるものというのは学校指定のカバンだった。


いったい誰のものだろう。


首をかしげながら机の上に置かれたカバンを手に取ってみる。


私がカバンを手にした瞬間、ジャラッとキーホルダーのものらしき音が響いた。


カバンになにかさげてあるのかな。


音の主だと思われるものがすぐ視界に映ったのでなにかさげてるのかという疑問はあっという間に解決した。


ジャラッと音を立てたのはファスナーに取りつけられていたキーホルダーだった。


そのキーホルダーはアルファベットでかたどられており、【Y】と【T】が並んであった。


ファスナーにつけられたキーホルダーのアルファベット、もしかして誰かの名前のイニシャルかな。


イニシャルにしてもそうじゃなくても、私のものじゃないことに変わりはない。
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