水月夜
そんな彼に、『水月夜』についての説明をする。


絵についてはそんなに詳しくないはずなのに、先日来た久保さんの説明が頭に残ってるせいか、口が勝手に動いた。


「それ、『水月夜』っていうの。好き嫌いがはっきりわかれる絵で、この絵を好きな人にはなにも起こらない。ただこの絵を嫌いな人には災いが降りかかってくるらしいよ。好きか嫌いかはどんな絵に見えるかでわかるんだって。ちゃんと水や月が見えたら好きで、暗くて不気味にしか見えない人はこの絵が嫌いだっていう証拠」


気づけばこんなにペラペラとしゃべっていた。


話しかけた相手の雨宮くんが聞いてない可能性だってあるのに、勝手にひとりでしゃべってしまった。


心の中で反省する私に、『水月夜』を見つめていた雨宮くんがくるっとこちらを向いた。


「……この絵、なんか暗くね?」


その言葉で、私と千尋は目を見合わせてこくんとうなずいた。


千尋も『水月夜』について絵を届けた人から話を聞いているだろうから、私がなにを言おうとしているのかわかると思う。


「……ねぇ、雨宮くん」
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