水月夜
クラスメイトの死と疑惑
なんだかボーッとする。
眠たくても全然寝られない。
部屋に『水月夜』を飾っていることを千尋と雨宮くんに知らせて見せた日から数日がたったこの日、学校で頬杖をついていた。
なぜ眠れなかったのか。
それは『水月夜』ではなく、数日前の雨宮くんの行動だった。
千尋が慌てて家から出たあとに『帰ったほうがいいよ』と声をかけたとき、雨宮くんはなぜか私に近づいてきた。
いったいどうしてだろうと気になって考えているうちに眠れなくなり、目の下に濃いクマが出てきた。
クマはメイクをすれば隠れるのでバレないだろうけど、他人の変化にいち早く気づく雨宮くんには絶対バレそうな気がする。
そして、直美にも。
10年も一緒にいる親友が私の変化に気づかないはずがない。
わがまま言って休めばよかったかもしれない。
小さくため息をついたそのとき、後方のドアから千尋が現れた。
千尋……!
ガタッと椅子から立ちあがって、千尋のもとへと駆け寄る。