ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「あ、コーヒー苦手でしたか?」

 私が苦笑すると、西留さんは射抜くような視線をこちらに向けた。私は思わず息を呑む。

「……失礼ながら、奥様は以前うちの経理部にいらっしゃいましたよね?」

「えっ? ……は、はい」

 思いがけない質問に当惑した。

 西留さん、私のことを知っていたんだ……。

「常務との出会いはそれで?」

「そうです……」

 いくら西留さんでも、颯馬さんが話していないならそういうことにしておいた方がいいよね。

「交際期間は短いですよね? 本当に好き合ってご結婚されたのですか?」

 矢継ぎ早に問いただしてくる西留さんの眼光が鋭さを増していく。気圧されて、私は図らずも身じろいだ。
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