ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「先にこっちへおいで」

「でも……」

「いいから」

 ソファーに腰掛けた颯馬さんが優しく諭す。

 なにか不自然だったかな。

 不安になりつつも、観念した私は恐る恐る近づいた。

「座って」

 ぽんぽん、と隣を叩く彼に並んで座る。すると、颯馬さんは自身の傍らから小さな紙袋を取りだし、中からさらに白のベロア素材の小箱を手に取る。

「それ……」

「今日できたんだ。これを早く渡したくて、急いで帰ってきた」

 嬉しげに告げた颯馬さんがそっと小箱を開けた。入っていたのは、サイズの違う二本の指輪だった。

 これって、まさか……結婚指輪?

「買ってくれたんですか?」

「だって、俺たちは夫婦だろ」

 颯馬さんは唇を綻ばせると、私の左手を取る。彼の手によって指輪がはめられ、金属の冷たい感触が伝わってきた。
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