ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「そうか。あれは当時も人気だったらしい。復刻した商品も予約が殺到していて、今追加製作を検討しているところだ」
そうだったんだ。全然知らなかった。まさか、またこれを見られる日が来るなんて。
私は感慨に打たれる。
「実は私、大学から花椿堂の就職試験も受けたんです。奇跡的にも、エントリーシート、適正テスト、筆記試験、説明会、グループディスカッション、一次面接までは通ったんですよ」
「二次面接でダメだったのか?」
「あー……参加できなかったんです」
私が苦笑すると、颯馬さんは「どうして?」と小首を傾げた。私は困ったように、愛想笑いを浮かべたたまま口を開く。
「二次面接に向かう電車の中で、目の前に座っていたおばあさんが倒れたんです。意識がなくて、心配で、次の駅で救急隊が到着するまで駅員の人とついていました。そして、おばあさんはひとりだったので、そのまま救急車に乗って一緒に病院に」
「会社には連絡しなかったのか?」
「病院についてから。面接官の人も、今からでも来れば一応面接はしてもいいと言ってくださったんですけど、お断りしました」
そう言うと、颯馬さんはふっと口もとを綻ばせた。
そうだったんだ。全然知らなかった。まさか、またこれを見られる日が来るなんて。
私は感慨に打たれる。
「実は私、大学から花椿堂の就職試験も受けたんです。奇跡的にも、エントリーシート、適正テスト、筆記試験、説明会、グループディスカッション、一次面接までは通ったんですよ」
「二次面接でダメだったのか?」
「あー……参加できなかったんです」
私が苦笑すると、颯馬さんは「どうして?」と小首を傾げた。私は困ったように、愛想笑いを浮かべたたまま口を開く。
「二次面接に向かう電車の中で、目の前に座っていたおばあさんが倒れたんです。意識がなくて、心配で、次の駅で救急隊が到着するまで駅員の人とついていました。そして、おばあさんはひとりだったので、そのまま救急車に乗って一緒に病院に」
「会社には連絡しなかったのか?」
「病院についてから。面接官の人も、今からでも来れば一応面接はしてもいいと言ってくださったんですけど、お断りしました」
そう言うと、颯馬さんはふっと口もとを綻ばせた。