ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「もっと甘えていい。俺はいつでも君の味方だ」

 柔らかな声にかき消される。

 そんな優しい言葉を掛けて笑わないで。

 胸が絞られたように痛んで、想いが溢れてくる。

 ダメなのに。私たちは本当の夫婦じゃない。私が面倒な存在になれば、この関係は終わってしまう。私がこの想いを口にしたら、颯馬さんのそばにはいられないのに。

 それなのに、目が合う度に愛しくて、気持ちが言葉になって出てしまいそうになる。

「小春?」

 顔をゆがめた私を、颯馬さんが不思議そうに見つめた。

 ……ダメだ、好きだ。

 私は颯馬さんの肩に手を置き、そっと頭を寄せた。いつもより濃厚に感じる爽やかな香り。温もりに、ひたすら思慕の情が高ずった。

 颯馬さんがなにを隠していてもいい。誰かの代わりでもいい。私はなにも聞かない。我慢するのは得意だから。だから今だけは、こうして彼の体温を感じていたい。
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