ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
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――颯馬さんを自分から抱きしめたあの日から、一週間以上が経った。
日常の業務をこなしながら社長のサポートに、会社の経営や方針の決定にも関わる常務取締役の颯馬さんの毎日は相変わらず忙しく、それに加えてここ最近は新しい企画の関係で帰りはさらに遅くなっていた。
私は毎晩起きて待っていたが、日付が変わることも多く、颯馬さんには『体調を壊すといけないから、先に寝てていい』と言われてしまった。
そんなことを言えば、颯馬さんだってそうなのに。そう思ったけれど、恐らく許してはくれないので、私は先に眠ったふりをして自室でひとり颯馬さんの帰りを待っていた。
眠る父の顔を見つめ、手を握る。朝から病院にやって来た。
「お父さん」
そっとつぶやくと、父の指が反応して小さく動いた。驚いた私は、両手で父の手を取り、「お父さん?」と呼び掛ける。