ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
身体が先に、彼の言葉を喜ぶ。
私は顔を両手で覆った。そのとき――。
「小春?」
突然扉の外に向かって投げかけられた颯馬さんの声に、私ははっとした。慌てて手の甲で涙を拭いながら走り出す。
「小春! 待ってくれ!」
勢いよく扉が開く音から間髪を入れずに、颯馬さんの抑えきれない焦りが含まれた一声が背中に刺さった。
「伝えたいことがあるんだ。君にたくさん、言いたい言葉がある!」
聞いたことがない彼の切迫して叫ぶような声色に思わず振り返りそうになるけれど、私は必死で地面を蹴って駆けた。
しかし、
「キャッ!」
肩を掴まれ、うしろへ引き寄せられる。
「君がなにを言ってもこの手は離してやれない。お願いだ小春。行くな」
大きな腕が私を包み込んだ。痛いほどにぎゅっと力が込められていて、少し乱れた息づかいが鼓膜を刺激する。
颯馬さんの存在をそばに感じるだけで、切なさに胸が突き上げられた。
私は顔を両手で覆った。そのとき――。
「小春?」
突然扉の外に向かって投げかけられた颯馬さんの声に、私ははっとした。慌てて手の甲で涙を拭いながら走り出す。
「小春! 待ってくれ!」
勢いよく扉が開く音から間髪を入れずに、颯馬さんの抑えきれない焦りが含まれた一声が背中に刺さった。
「伝えたいことがあるんだ。君にたくさん、言いたい言葉がある!」
聞いたことがない彼の切迫して叫ぶような声色に思わず振り返りそうになるけれど、私は必死で地面を蹴って駆けた。
しかし、
「キャッ!」
肩を掴まれ、うしろへ引き寄せられる。
「君がなにを言ってもこの手は離してやれない。お願いだ小春。行くな」
大きな腕が私を包み込んだ。痛いほどにぎゅっと力が込められていて、少し乱れた息づかいが鼓膜を刺激する。
颯馬さんの存在をそばに感じるだけで、切なさに胸が突き上げられた。