ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「二次面接に来られなかったあの日、電話したときのことを覚えているか?」

「えっ? 二次面接の日のことですか? えっと、たしか……貰った書類に記載されていた面接担当者の電話番号に……」

 話しながら、ある思いが閃光のように頭を掠める。

 まさか。

 唖然とする私を見た颯馬さんがゆっくりとうなずいた。

「俺も一次から面接官として面接に参加していたんだ。みんなが仕事に対する姿勢や自身の強みをアピールする中、君は、時間いっぱいうちの商品の魅力を語っていた。キラキラした目で、楽しそうに。エントリーシートを見てもそう。君は、人や周りへの愛で溢れていた。愛情深く、いい子だな……。可愛いと素直に感じたよ」

 当時を思い返しているのか、颯馬さんはすっと目を細めて少し遠くを見ている。いかにも嬉しそうに話すものだから、私は気恥ずかしさに目を伏せた。
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