ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「私、ものすごく緊張していたので全然……」

「二次面接が終わってから偶然電話に出て、事情を聞いたときは残念だったな。つい今からでもと言っていたのに、君は断固として受け入れなかったから」

 そうか。あの電話の相手は颯馬さんだったんだ。ひどく緊張していたせいもあるけれど、こうして今目の前で声を聞いていても、当時の私の記憶とは結びつかなかった。

 それなのに、颯馬さんはただの就活生だった私をずっと覚えてくれていたんだ……。

「そのときは社員としてほしかったからだと思っていたけれど、今思えば、俺は出会ったときから小春のことを好きになっていたのかもしれないな。見合いの話をされて、ふと君の顔が浮かぶくらいだから」

 柔らかな眼差しが注がれ、胸がどきりと音を立てる。
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