ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「君を手に入れてあの状況で俺が好きだと伝えたら、小春は自分の気持ちなど無視して俺に従おうとしたんじゃないか?」

 そんな……!

 心の中では咄嗟に反論したけれど、冷静に考えると否定しきれなくなった。

 交換条件と言いつつ、私は自分を救ってくれた颯馬さんに対してかなりの引け目を感じていた。互いに捧げられるものを捧げたはずで、どちらの得ている対価が大きいとかいう問題ではない。恐らく私の性格的なものだと思う。

 だから、もしも颯馬さんの言う通り気持ちを伝えられていたら、私は従っていたかもしれない。あのときの私は、お父さんを守ることで頭がいっぱいだったから。

「俺は心から君に好きになってほしかったんだ。だから、伝えるのはゆっくり時間をかけて一緒に過ごしてからにしようと思ってた。だが、そのせいで君につらい思いをさせていたんだな。すまなかった……。許してくれ」

「謝らないでください」

 颯馬さんは私を思いやってくれていただけなのに。
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