ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
私たちは、父を病院に送り届けてマンションへと戻ってきた。
「どうした? 入らないのか?」
玄関で立ち尽くす私に、すでにスリッパを履いた颯馬さんが声を掛ける。
「は、入ります……けど……」
私がうつむき加減に視線を逸らすと、颯馬さんは、
「おいで」
と優しく手を差し伸べた。私は「えっ!?」と狼狽しつつも靴を脱いでその手を取る。連れられるようにしてリビングへと足を進めた。
「そんなに見ないでくださいよ。恥ずかしいです」
「見ておきたいんだ。照れてる小春が可愛くて」
ソファーに並んで腰掛けるけれど、こちらを覗き込む颯馬さんの顔があまりに近くて羞恥心に身体が火照る。