ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「えっ!? そ、颯馬さん!?」

 突然視界が高くなり、私は戸惑いの声を上げつつも彼のジャケットにしがみついた。

「どこへ行くんですか?」

 颯馬さんは自室のドアを開け、そこにあった大きなベッドに私を下ろす。私の上に跨った彼が、妖艶に揺れる瞳でこちらを見下ろした。

「今すぐ抱きたい。嫌か?」

 心臓が大きく音を立てる。

「い、嫌ではないですけど……」

 私が言い淀むと、颯馬さんは「んっ?」と首を傾けた。

「……まだ、外が明るいので」

 早口で言い終えると、私は堪らずそっぽを向いた。

 耳まで熱い。
< 160 / 175 >

この作品をシェア

pagetop