ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
 すると、はぁーっとため息をつくのが聞こえてきた。不安になり横目に見ると、颯馬さんは弱りきったように顔をゆがめている。

「そんな可愛い顔されたら止められない」

 つぶやいた颯馬さんが、私の首筋に顔を埋めた。

「颯、馬さんっ……!」

 息づかいと温度を感じる度に、甘い痺れが身体に走る。

「ずっと小春が欲しかった。優しく触れて、俺がどれだけ君を想っているか思い知らせてやりたかった」

 艶気を含んだ低い声が鼓膜を刺激した。思考が徐々に快感に飲み込まれていく。

 私も、もっと颯馬さんを知りたい。

 私も颯馬さんの首もとへと手を伸ばしたそのときだった。

 インターホンが鳴り響き、突如として私の意識は引き戻させる。
< 161 / 175 >

この作品をシェア

pagetop