ニセモノ夫婦～契約結婚ですが旦那様から甘く求められています～

「さっきの続きしようか」

　私を見下ろす颯馬さんが、いたずらに微笑む。

「でも、お昼ご飯が……」

「あとで俺が作るよ。きっと、小春は足腰立たなくなるからな」

　その言葉に、私はかあっと頬が熱を持つのがわかった。颯馬さんが艶やかに口角を上げる。

「愛してるよ。小春。君はこれからも俺のものだ」

　囁いた颯馬さんの顔が近づき、唇が重ねられた。視線がぶつかり、どちらからともなく微笑み合う。胸の膨れるような心地良さを感じた。

　……幸せだ。

　あの夜、颯馬さんと契約を交わしたときは、こんな日を迎えられるなんて思ってもみなかった。それもこれも、颯馬さんがいつだって優しく私を包み込んでくれたおかげだ。

　互いに思いやりすぎてすれ違ったこともあったけれど、これからは想いを確かめ合って本物の夫婦になっていきたい。

　颯馬さんがそばにいるだけで、景色がいつもと違って見えるのだ。いつかそのことを彼にも伝えたい。ゆっくりと、時間をかけて。