ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
――柴坂常務と契約を交わしてから、今日でちょうど一週間が経った。
二日前の夜、店に『あさっての夜に迎えに行く』という連絡があって、仕事終わりだろうか。ほんの一時間ほど前の二十時を少し回った頃、宣言通り柴坂常務はスーツ姿のままやって来た。
この一週間、私は、開店当初から店にパートに来てくれている梨川さんに電話で、父が倒れたこと、店もしばらく休みにするという話をした。
『うちの都合で突然すみません。休業する間も私にできることであればなんでも……』と言うと、梨川さんは『私のことなんて気にしなくていいの! それより、小春ちゃんは大丈夫なの? あなたはすぐ無理をするから。ひとりで考え込まないで、なにかあったら連絡してね』とひどく心配してくれた。
梨川さん、息子さんが今年高校の受験で、『頑張って働いて制服買わなくちゃ!』と言っていたのに……。
その優しさに私は鼻の奥がツンと痛くなって、目の縁には薄らと涙が滲んだ。
二日前の夜、店に『あさっての夜に迎えに行く』という連絡があって、仕事終わりだろうか。ほんの一時間ほど前の二十時を少し回った頃、宣言通り柴坂常務はスーツ姿のままやって来た。
この一週間、私は、開店当初から店にパートに来てくれている梨川さんに電話で、父が倒れたこと、店もしばらく休みにするという話をした。
『うちの都合で突然すみません。休業する間も私にできることであればなんでも……』と言うと、梨川さんは『私のことなんて気にしなくていいの! それより、小春ちゃんは大丈夫なの? あなたはすぐ無理をするから。ひとりで考え込まないで、なにかあったら連絡してね』とひどく心配してくれた。
梨川さん、息子さんが今年高校の受験で、『頑張って働いて制服買わなくちゃ!』と言っていたのに……。
その優しさに私は鼻の奥がツンと痛くなって、目の縁には薄らと涙が滲んだ。