ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
会社から電車で六駅、駅から狭い路地を抜けて十分ほど歩くと、昭和レトロの雰囲気が漂う【手打ちうどん まる】という二階建ての古い店が覗く。
あれっ? 暖簾が出ていない。まだ二十時なのに、もう閉めちゃったのかな。
思わず早足になる。私は木でできた格子状の引き戸に手を掛け、一気に開けた。
中では、出入口からL字に見えるカウンターに腰掛けていた父が、私の姿を認めて目を見開いていた。
「こ、小春か。びっくりした……」
そう言った父が、手に持っていた紙のような物をぐしゃりと前掛けのポケットにねじ込む。
今、お父さん、なにか隠した?
少し気になり、父の手もとに視線を注いだ。
「ったく、父さん心臓が悪いんだから、そんなに勢い良く入ってきて驚かすんじゃないよ。倒れたらどうするんだ?」
こちらに歩み寄ってきた父に、はっとする。「ただいま。ごめん」と苦い笑みを返すと、父は「おかえり」とそばにあったテーブルの椅子をひとつ引いてくれる。
「……だって、早く閉めるなんて珍しいから。なにかあったのかと思って」
そこにとりあえずバッグを置きつつ告げた。すると、父の顔が一瞬曇ったように見える。
あれっ? 暖簾が出ていない。まだ二十時なのに、もう閉めちゃったのかな。
思わず早足になる。私は木でできた格子状の引き戸に手を掛け、一気に開けた。
中では、出入口からL字に見えるカウンターに腰掛けていた父が、私の姿を認めて目を見開いていた。
「こ、小春か。びっくりした……」
そう言った父が、手に持っていた紙のような物をぐしゃりと前掛けのポケットにねじ込む。
今、お父さん、なにか隠した?
少し気になり、父の手もとに視線を注いだ。
「ったく、父さん心臓が悪いんだから、そんなに勢い良く入ってきて驚かすんじゃないよ。倒れたらどうするんだ?」
こちらに歩み寄ってきた父に、はっとする。「ただいま。ごめん」と苦い笑みを返すと、父は「おかえり」とそばにあったテーブルの椅子をひとつ引いてくれる。
「……だって、早く閉めるなんて珍しいから。なにかあったのかと思って」
そこにとりあえずバッグを置きつつ告げた。すると、父の顔が一瞬曇ったように見える。