ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
あなたの妻です
ホテルに到着して広大な吹き抜けのロビーに足を踏み入れると、西留さんは「こちらです」とすぐになにかを見つけたように歩を運ぶ方向を定めた。
すると、私たちの正面には、銀縁の眼鏡を掛けた男性がこちらに気づいて身体をふたつに折っているのが目に入る。
「柴坂常務、おはようございます」
顔を上げた男性に、颯馬さんも「おはよう」と返す。
この人も知っている。花椿堂の社長――つまり颯馬さんのお父様の秘書をしている高田さんだ。
どんなときでも冷静で、決して態度を崩さない。社内では、鋼鉄の仮面を持つ男なんて言われていたっけ。
記憶を辿っていると、高田さんと視線がぶつかった。すかさず私にも丁寧に一礼してくれる彼に、私も弾かれるようにお辞儀する。
「父たちは?」
「エグゼクティブフロアでお待ちです」
そう言った高田さんが、私たちを案内してくれる。
……いよいよ颯馬さんのご両親に会うんだ。
エレベーターでご両親たちのいる四十二階まで上る。東京の街を見渡せるガラス張りの箱の中には、変わった組み合わせの四人。ボタンの上に表示されたパネルの階数が増えていくたびに、私は強い緊張感から吐き気がした。
すると、私たちの正面には、銀縁の眼鏡を掛けた男性がこちらに気づいて身体をふたつに折っているのが目に入る。
「柴坂常務、おはようございます」
顔を上げた男性に、颯馬さんも「おはよう」と返す。
この人も知っている。花椿堂の社長――つまり颯馬さんのお父様の秘書をしている高田さんだ。
どんなときでも冷静で、決して態度を崩さない。社内では、鋼鉄の仮面を持つ男なんて言われていたっけ。
記憶を辿っていると、高田さんと視線がぶつかった。すかさず私にも丁寧に一礼してくれる彼に、私も弾かれるようにお辞儀する。
「父たちは?」
「エグゼクティブフロアでお待ちです」
そう言った高田さんが、私たちを案内してくれる。
……いよいよ颯馬さんのご両親に会うんだ。
エレベーターでご両親たちのいる四十二階まで上る。東京の街を見渡せるガラス張りの箱の中には、変わった組み合わせの四人。ボタンの上に表示されたパネルの階数が増えていくたびに、私は強い緊張感から吐き気がした。