ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
そういえば……。颯馬さんと契約を交わした夜、彼は正体に驚く私に、『知っていたのか』と言っていた。あのときは動揺していてそこまで頭が回らなかったけれど、颯馬さんも私を知っていたっていうことだよね。
突然湧いた疑問が、脳裏にまとわりついた。
私はただの派遣社員。仕事で、常務である颯馬さんとの係わり合いなどまるでなかったはずだ。それなのに……いったいどうして?
気にかかって、ご両親と話している颯馬さんの横顔を食い入るように眺めた。私の視線に気がついた颯馬さんが、こちらを向いてふっと微笑む。
頬がみるみる熱くなった。お父様とお母様の嬉しげな視線が注がれているのを感じて、私はいたたまれなくなる。
いけない。今はこの食事会に集中しなきゃ。思案しても仕方ない。あの夜会ったのは、どう考えても偶然なのだから。
私は熱のこもった頬を冷ますように手をあて、自己完結した。
それにしても、息子がこんなふうに甘い眼差しを送っているのを見たら、お父様たちもまさか私たちの関係が偽りのものだなんて思わないだろう。演技までこなすなんて本当にさすがというかなんというか。でも、私にとっては心臓に悪い……。
ため息が溢れそうになるのをすんでのところで堪える。
突然湧いた疑問が、脳裏にまとわりついた。
私はただの派遣社員。仕事で、常務である颯馬さんとの係わり合いなどまるでなかったはずだ。それなのに……いったいどうして?
気にかかって、ご両親と話している颯馬さんの横顔を食い入るように眺めた。私の視線に気がついた颯馬さんが、こちらを向いてふっと微笑む。
頬がみるみる熱くなった。お父様とお母様の嬉しげな視線が注がれているのを感じて、私はいたたまれなくなる。
いけない。今はこの食事会に集中しなきゃ。思案しても仕方ない。あの夜会ったのは、どう考えても偶然なのだから。
私は熱のこもった頬を冷ますように手をあて、自己完結した。
それにしても、息子がこんなふうに甘い眼差しを送っているのを見たら、お父様たちもまさか私たちの関係が偽りのものだなんて思わないだろう。演技までこなすなんて本当にさすがというかなんというか。でも、私にとっては心臓に悪い……。
ため息が溢れそうになるのをすんでのところで堪える。