ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「颯馬さん?」

 うそ、今度こそ眠った?

「颯馬さん」

 呼び掛けるが、返答はない。しばらくすると、微かな寝息が聞こえてきた。

 本当に疲れていたんだな。

 私はあきらめて、その寝顔を眺める。

 ……眠っていても綺麗。

 目もとにかかっていた髪を避けた。颯馬さんのまつ毛が小さく揺れ、ヒヤリとする。

「こうしていると、本物の夫婦みたい……」

 もし、颯馬さんに好きな人ができたらどうなるんだろう。本当に結婚してもいいと思える人に出会えたら? 離婚してくれって言われるのかな。

 私たちにとって、この結婚が一生続くとは限らない。彼の采配次第で、パートナーを解消することだって有り得るのだ。

「泣いてるのか?」

 またしてもいつの間にかこちらを見ていた颯馬さんが起き上がる。
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