ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
まじりけのない輝き
 ――颯馬さんの家に来て、約二週間が経った。

 私は颯馬さんと相談して、毎日料理と掃除をさせてもらっている。といっても、リビングの掃除はロボット掃除機が床を頑張って綺麗にしてくれてしまうので、せいぜいフロアワイパーで仕上げや、棚などのモップ掛けをやる程度だけれど。

 料理は朝と夜。昼にお弁当は……と聞いたところ、移動したりで食べられないこともあるから大丈夫と言われてしまった。

 洗濯物はすべてコンシェルジュの人に渡せばマンションが提携しているクリーニング会社に出してくれるらしく、終われば届けてくれるので残念ながら私はやることがない。

 完璧すぎるサービスたちのせいで、ゆっくりお父さんのお見舞いに行っても毎日時間が余る。一度颯馬さんにも、なにか困っていることややって欲しいことはないですか?と聞いたが、『俺は君を家政婦にしたくて一緒にいるんじゃないから、気にしなくていい』と言われてしまった。

 家政婦でなくとも仮にも私は妻だ。望んでいるなら、家事くらいしたってバチは当たらないと思う。仕事もしていないのに、このままでは手持ち無沙汰で死んでしまいそうだ。

 もっと、私にできることがあればいいのに。でも、色々と勝手にするのも気が引けるし……。

 ひっそりとため息をつきながら洗面台を磨いていると、小さくはぁーっと息を吐く声が聞こえてくる。
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