蛍火

「……俺は、お前に合わせようと思って合わせたことは一度もねぇよ」

「ゆうは器用だものね」

「いやそこかよ。てかそうじゃねえだろ」

「違うの?」

「そういう理屈じゃねえ。感覚?みたいな。俺とお前は相性がいいんじゃねえの?」

「そうなら嬉しいな。私は君が好きだから」

──ぴちょん。あぁ、まただ。

水面を見るが、やっぱり揺れてない。鼓膜の奥まで響くような優しい水の音、何かが少しずつたまっていくような、そんな。
優夜は、その音の原因がどこにあるのか、ここに至るまでにずっと考えていた。だけど今、ましろのその一言で、全て分かった気がした。


あーぁ、と、呆れたような自分の声。頭の中に響くそれに、うるせえと怒鳴りたくなる。それでも、気づいたらもうそれまでで、加速する思考は止まってはくれなかった。

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