蛍火
「…悪いな、せっかく教えてもらったけど、お前とはもう来れそうにない」
「な、んで、」
「だってお前にとって俺は…友人だろ?」
自分で言っていて胸が痛い。あぁそれでも、自分が人をここまで好くことなどこれから先ないと言えるほど、気づいた瞬間の彼女への愛しさといったら!
妹だなんてとんでもない、全部が愛ゆえの可愛さに過ぎなかったのだ。
扇風機に揺られた髪の毛に視線が向いてしまったのはなぜか。
はしゃぐ笑みに心がうずいたのはなぜか。
その瞳にまつげの影が落ちるのが分かったのは、それほど彼女のことを見つめていたからで。
全部全部、最初から。気づけなかっただけで、この恋は元からずっとあったのかもしれない。一目惚れ、だったのかも。
いつから恋してたのかすら分からないほど、彼女のことが好きになるのは優夜にとって当然のことのように思えた。