蛍火
その声を聞いて、優夜は動けなくなってしまった。
両親も、育ててくれた人も亡くした彼女の悲痛な叫びが、聞こえたような気がして。

「まだ、話してないこと、あるから……」

必死に自分を繋ぎ止めようとしている懸命さが、胸に痛かった。
迷ったあと、優夜は再び彼女の隣に座りこむ。ましろの細い指が、優夜の指を控えめに触ってきてびくりとした。
おそるおそるといった様子のそれを何気なしに目で追う。そうして、その指を見ていて、気づいてしまった。

「ゆう、ごめん、ごめんね、私、これだけ、これだけは、言うつもりなんて、なかったのに……」

「……ま、しろ?」

「でも、君が離れるなんて、そのほうがよっぽど堪えられない、ねぇ、ゆ、う、わた、………ぁ」

その指が出会った頃より痩せていただなんて、そんなの、

「っ!?おい、まし…!?」

「ご、め、…むね、く、るし…」

「なぁ、しっかりしろ、ましろ…!!」































そんなの、あんまりじゃないか。



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