蛍火
第3章
「そう、藤田くんは知らなかったのね」
「あぁ」
倒れたましろを担いで優夜がやってきたのは、村で唯一の医者をやってるハルという医者のところだった。綺麗でおしとやかな彼女は優しくて、まさに名前の通り春の日差しのような女性で村の人気者。
ストレートなましろの髪の毛と違って彼女はゆるくパーマをかけて、栗色に髪の毛を染めている。柔らかな雰囲気にその髪がよく似合う彼女は、村の人たちのことを本当によく見てくれているのだ。
「…ましろちゃんは心臓が生まれたときから悪くて、だから、空気の悪い都会にはとても住めなかったのよ。空気が綺麗なここへ越してきたのは、ましろちゃんが生まれてから一年もたたない頃のことよ」