蛍火
『…行ってみたいとはあまり思わないけれど。でも、君が見てきたものを聞くのは面白いよ』
彼女は、ましろは、行ってみたいとはあまり思わないと言っていた。…それは、このことが関係していたからだろうか。
本当に行きたいとあまり思ったことがないのか、行くのが危険だと知っているから行きたいと思わないだけなのか、それとも別に理由があるかもしれないし、ないかもしれない。
優夜には、それを判断する材料が足りなかった。だって、何も知らなかった。
彼女と出会って三ヶ月ほど。4月に出会ってから7月に入る今まで、何度かこういうことはあったらしい。自分が出くわさなかっただけで。落ち込む優夜に、ハルはそっと話をしてくれた。
ましろの両親は、その引っ越しの為に家に戻ったところを事故に遭った。テツ、という知り合いのおじいさんにましろを預けていたから、ましろは無事だったようだが。
そしてそのまま、ましろはテツというおじいさんに引き取られたらしい。