蛍火
すぅ、すぅ、とベッドから穏やかな寝息が聞こえてくる。
運ぶ途中でましろは意識を失ってしまったらしかったが、今はこうして寝息をたてているのだから安心した。

「先週、夏風邪を引いてしまった小さな子供が、私の元にきたの。お薬を飲んでゆっくり休んだその子供は、3日もせずに体調が治ったそうよ。
一昨日ここにその子供が、その子のお祖母さまが育てていらっしゃるという一輪の小さな可愛らしいお花を届けにきてくれたの。お姉ちゃんありがとう、と、たいへん可愛らしい笑顔だったわ…」

ふふ、とハルは微笑む。
彼女の座るソファーの目の前にあるテーブルの上に小柄な一輪挿しがあって、そこに小さな白い花が飾ってあった。届けてくれた花というのは、これのことなのだろう。
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