蛍火
嬉しそうにその花を指先で優しくつつき、ハルはゆっくり目を瞑った。

「……ましろちゃんは、藤田くんがこの村に来るまで、あんな風に笑う子じゃなかったのよ」

「あんな風にってどういうことだ?」

「そのままの意味。あの子は…今よりもずっとずっと寂しそうで、少なくとも人と会話をして笑うことなどなかったもの」

「は?」

あのましろがか?と優夜が問うと、ハルは頷いた。
飯食えって言えば嫌な顔して、皿洗いは人に押しつけて楽しそうにして、自分はアイス美味そうに食べるあいつがか?と念を押すと、ハルは面食らったような顔をしてからぷっと吹き出した。あの子ってば、そんな顔をするような子だったのね、と。

その顔がどうにも悲しげにも見えたが、優夜はそれを言葉には出来なかった。それを聞いてしまうのは、なんだか違う気がしたのだ。
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