蛍火
「ゆうは、私の側にいてくれる?」
「あ?」
帰り道、ましろの家に向かっていると、ましろはぽつりと聞いてきた。
優夜は思わず柄の悪い、そしてなおかつ間抜けな声を上げた。ましろの方を見てみるが、ましろは前を向くばかりでこちらを見てくれない。
そんな状態なのに、側にいて欲しいとなおのこと望むというのか、この子は。
あんなに聞こえていた蝉の鳴き声が一瞬止まった。ふと顔をあげると星が綺麗に広がっていた。広い広い空に目を向けていると、また蝉が鳴き始める。
まるで、二人だけ切り離された世界で散歩しているようで、優夜はどくどくと鳴っている心臓を抑えるように、そこをぎゅっと握った。
なんて、答えればいいのか分からなかった。当たり前だろ、と言っていいのだろうか。
聞こえないふりでもしようか。彼女は答えを求めていないのかもしれないし。
優夜は考える。
何が最善なのか、何が正解なのか。