蛍火
……でも、沈黙は優夜に答えをくれはしない。
「離れないで、いてくれる?」
念を押すような問いかけだった。
優夜は、それはずるいだろう、と声を上げてしまいたかった。そんなことを言われたら、例え火の中水の中、等と言ってしまいそうだ。
クサイ台詞だと笑われる?ばかじゃないの、と呆れる?冗談だよ、と言われる?
──それとも、そっと微笑んでくれるだろうか。
「──お前が、それを望むなら」
出た台詞は全然違うものだったけれど。
優夜は、ずるいそれを受け入れることにした。
だって自分もずるいから。彼女のことが好きなことにかこつけて、側にいる理由を作りたかったから。拒絶されないのであれば、彼女が望むのならば、それを受け入れようと思った。
あんなに迷っていた答えが嘘のようにするりと出たのは、きっと恋が人を盲目にするせい。