蛍火
第5章
ましろと出会ったのは4月の終わり頃、日の落ちた後のこと。

高校から帰る途中に立ち寄った、電車の駅を降りて10分ほどにある小さな商店だった。駄菓子でも買って帰ろうと入ったそこには、ワンピースを着た少女とも見れる女の子がいた。

「…あ、」

その後ろ姿はとても美しく、目に入った髪の毛が随分と綺麗だと思って、つい声が出て。商品を眺めていたらしい彼女はその声に気づいてこちらへ顔を向けた。
さらりと揺れる黒髪がやけに艶めかしく、都会の女の子の染めた髪ばかりを見ていた優夜はそれがやけに新鮮に感じたのだ。
丸くぱっちりとした目と視線が合う。あまり背は高くないはずなのに、童顔のそれはなぜかとても大人びて見えた。
ほぼ無のような表情のせいだったかもしれない。小さな唇はきゅっと結ばれているがほんのりとピンク色をしていて、やけに白く見える頬がそれを余計に引き立てていた。
絵にしたら綺麗だろうなと、率直に考えるほど
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