蛍火
「よく見てれば目だって動いてるし、首を傾げたりしてるだろ?それで、初めて見た俺の名前が知りたかったのかな、って」
「別に、知りたいだなんて…」
ふい、と少女は顔を背けてしまった。
しかし、その白い頬とは対照的に髪の毛から覗く耳がふわりと赤くなっているのを見た優夜はくくっと笑ってしまう。照れているのだろう。
「な、なんで笑ってるの!」
その声に少女がぱっと顔を上げて声音を強め、優夜はごめんごめんと謝る。
ばーか、とこちらを罵る少女にお詫びにとその手にある棒付きの飴を奢った優夜は、少女を家まで送ることにした。
送ると申し出ると少女は渋っていたがまだ村を散策しきっていないので把握したいからと優夜が言うと、しょうがないなと同行を許してくれた。
「私の家まで、何もないと思うけどいいの」
「いいのいいの。見て回りたいだけだしな」
少女の家までの道すがら、優夜は少女のことをよく見てよく話した。ここの星は電灯がないから綺麗に見える、山の湧き水というのを初めて飲んだ、川の水が透き通っていて、吸う息がとても美味しい──。